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Interview

定期的に更新するインタビューのページです。Webクリエイターだけでなく、
さまざまなジャンルの方々のインタビューを掲載していく予定です。


07 勝山ゆかこ

2006.03.02 [ Artist ]

勝山ゆかこ

GALERIE | MOUVEMENTでの独特な表現手法、テントギャラリーによる「アートとの偶然の出会い」、百文[ momon ]ブランドによる彫金師としてのプロ作家活動、不思議な世界を醸し出すイラスト「Ricky」...。様々な顔を持つ勝山氏の表現には、他ではなかなか見られないオリジナリティ溢れる世界が繰り広げられている。表現者の脳内には何が写っているのか、話を伺ってみた。

インタビュアー/id=Nagano 写真/ハラヒロシ

─まずは、アート活動のほうからお伺いします。このような活動をするそもそものきっかけは何だったのでしょう?

小さいころは協調性に乏しくて、ひとりで木をじーっと見てデッサンしたりとかしてました。親と一緒に行動することもあまりなく、ひとりで動くほうが良かったんです。絵を描くのが好きというよりは、人に馴染めなかったというのがありますね。絵の中からそういうのが滲み出ているような気がします。そういう意味で、油絵からは内面が出てる唯一の自己表現方法でした。小学校の担任が画家の先生だったんですけど、とても厳しくて、ほぼ毎日花壇の前でデッサンさせられてました。葉の一枚一枚が正確に描かれていないと叱られました。叱られるという恐怖心から...正直言って絵を描くことはそれほど楽しくなかったですね。

─ずっとそういった中でやってきていたのですか?

高校ぐらいまではずっとそんな感じでした。自分の中で変化を感じたのは、海外を転々とするようになってからですね。ニュージーランドやパリなどいろいろな国を一人で旅をして、そこで気づいたのは、違う国への憧れはずっとあったけれど、基本的にはどこもみな一緒だということでした。文化の違いはあれど感情の部分ではみんな同じ。そこに差を感じなかったのです。そのあたりから自分の描く絵も形にとらわれなくなりました。今までは自分の目で見たものを信じてきたけれど、目からみた情報は見えるものでしかなくて、そうではない、見えない部分を表現したいと思うようになりました。アートに対する自分の哲学が変わりました。そっくりだとか、かっこいいだとかがアートではないということに気づいたのです。外国の見知らぬ土地でただひとり、野宿とか日本ではありえない生活をしたんですけど、そのときの視線・視点があったおかげで気づいた部分だと思っています。

─帰国後の活動は、それ以前と変わりましたか?

テントギャラリーをはじめました。乗っていた車を軽貨物に変えて(笑)。テントなのでどこでも移動できますよね。3m四方のテントをおもむろに広げ、その中で作品を展示するのです。GALERIE | MOUVEMENTの名前もここから来ています。

─そのコンセプトは?

美術館で見るアートはお金を払わなくてはいけないし、足を運ばなくてはいけないので、敷居の高い場所です。そうではなくて、犬の散歩や買い物の途中で偶然立ち寄るアートがあってもいいんじゃないかと。日常空間にいきなりこういったテントとか作品が現れたら、それはもういきなり非日常のものに出くわす感じですよね。このコンセプトそのものが、形にとらわれない、という私なりのひとつの答えを具体化した手法です。

─それって大変ですよね?どんなとこでやるのでしょうか?

山とか、川とか、...ゲリラ的に(笑)。本当は公園とか公共の場でやりたいんですけど、許可がおりなくて。なかなか社会が許してくれません(苦笑)。

─勝山さんにとってご自身の「作品」をどうとらえてますか?

造形物としての「作品」というのは手に残った形ある「モノ」でしかないと思ってます。それを生み出すまでの想像を繰り返す過程、内側から湧き出すような、ウジ虫のように何もないところから出てくるようなエネルギーが私にとってのアートです。描いている感覚はなくなって、自分の意志ではないところで表現させられているような感覚になります。だから自分にとって、できあがった作品そのものはゴミ同然、ただの物体でしかない。大事なのは湧き出てくるエネルギーそのもので、こっちが本当のアートだと思っています。

─現在、GALERIEは写真専門誌「photographica」で連載されています。どういった経緯で連載されることになったんですか?

編集部の沖本さんがサイトを見て気に入ってくれたのがきっかけです。それ自体は随分前だったんですけど、時を経て沖本さんが写真の新雑誌を創刊する際、GALERIEのことを気にとめていてくださって、連載の打診を受けました。沖本さんいわく、デヴィッド・リンチのアートワークに似ているんだそうです。日本でこういうことやっている人は他に知らないと...。光栄です。

─GALERIEの作品で特に印象的なのが「屍」を題材にしたものが多いというところですね。「屍」を題材に選ぶ理由はなんですか?

自分はいま、生きています。でも、きっと気づかないことがたくさんあると思うんです。いろいろなものを見逃してきていると。だけど魂や生命を失った者を見ると、そこには言葉はないけれど屍は全て悟っているような気がするのです。生きているということの意味を考えさせられます。「死」ではなく「生」を考えるんです。かなりスピリチュアルな、私の心の中の核心にある感覚です。

─GALERIEのカバーはちょっと滑稽な要素もあるように感じだのですが。

「死」とか「生」とかちょっと堅い話になってしまったんですけど、生きていく中でユーモアは欠かせません。実は小さいころは芸人になりたいと思っていました(笑)。いや、実際のところは笑いという意味ではなくて、真剣に生きて真剣に行動していくことが滑稽で、それが本当のユーモアだと思います。人から見たら滑稽なことをやっていると思いますけど、それが美しい生き方ですし、人に笑われたって関係ないんです。みんな必ずそういうものを持っているはず。表現できないのは、笑われるのがイヤだとか、プライドがあって守りに入ってるとかそういうものなのかな。でも本当に自己表現をしたいと思ったら、そういうものを外していけば自分らしくなるのではないかなと思います。

─アート活動のこれからはどうしていきたいですか?

ゴミみたいな作品をたくさんつくってきましたけど、さっきも言ったように作品は作品でしかない。本当のアートというのは、想像を繰り返す作者そのものではないかと思っています。作品は付録のようなものとしてこれからも作っていきますけど、最終的には作家自身の生き方だと思うので、いろんな手段で自分を表現していきたいと思います。

─まだ表現しきれていないということですね?

はい、そうですね(笑)

─いっぽうで、彫金師としての活動もされてますね。

はい、百文[momon]という名前で、2006年の元旦に立ち上げたハンドメイドの宝飾・アクセサリーのブランドです。「百=たくさんの」+「文=文様・デザイン」という意味で、主に和テイストの独自性の強い商品です。自宅の土間の彫金工房でシルバー・18K・925などの配合から加工、ロウ付けまで全て手作りで制作しています。昔の彫金師の製法そのままに独創的なデザインの商品を揃えてます。こちらはアート活動とは一線を画しています。作品としての考え方も違いますね。作家としてのプロ意識を磨いて、収入として成立したときにここでの作品は「商品」になります。ですから、売れる商品にするためにいろいろ調査などもしていますよ。ただ、最終的に何が売れるかというと、自分だけの視点でつくりあげた個性の強い商品でした。百文で扱っている商品は、他にはないものでラインナップしていきたいと思います。百文の商品は、本当に気に入ってくれる人が買っていってくれますし、こだわりをもってくれるお客様がついてくれること、そういうお客様に買っていただけることが喜びですね。

─オンラインで販売することの難しさはありますか?

Webサイトは自分だけの空間なので、イメージ通りの場を作ることはできますが、商品の良さが100%伝わりきらないのが難しいです。リアルな店舗なら「手にとったけど買わない」とか「足を止めたけど買わない」といったチェックができて、買うまでに至らなかったプロセスとか、どこが甘かったのかとかわかるのですが、ネットだと売れないときに何がいけなかったのかわからないのでリサーチしきれないところがありますね。少しずつクリアしていっている部分もあり、試行錯誤の途中です。

─様々な活動をしていらっしゃいますが、10年後、20年後などの将来とか、今後のゴールはあるのでしょうか?

今まで助けてくれた人に、どんな形かわからないですけど、恩返しできるようにしたいと思っています。あと、海外で何かしたくてパリとかに行ったんですが、まだ力がなくて何もできなかったという部分があるので、海外でも自分の力をアピールできるように、諦めず何かひとつでも形に残せるようなことをしたいと思っています。

momon | Yukako Katsuyama
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Profile

勝山ゆかこ [ Yukako Katsuyama ]

1975年長野県須坂市生まれ。長野市在住。絵、オブジェ、インスタレーション、写真、イラストなど、手段・手法にとらわれず独自の切り口での創作活動を続ける。2006年から新たにハンドメイドの彫金ブランド百文[ momon ]を展開。オンライン販売のほか、各種オーダーメイドにも対応。

Portfolio

Photographica
[エムディーエヌコーポレーション]
1,575円(税込)
フォトグラフィカ
» 創刊第2号 2006年2月27日発売

"写真をデザインする"をコンセプトに、主に仕事で写真を扱う人に向けたプロレベルの絵づくり・作品づくりのアイデアや視点、撮影に関する手法とテクニックなどを紹介するフォトカルチャーの先端情報誌。第二号の巻頭は蜷川実花/杉本博司。平間至、小林紀晴の連載もスタート。「GALERIE」の連載は毎号4ページ。