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Interview

定期的に更新するインタビューのページです。Webクリエイターだけでなく、
さまざまなジャンルの方々のインタビューを掲載していく予定です。


11 ながはり朱実

2006.08.04 [ Illustrator ]

ながはり朱実

個性的なイラストやグラフィックデザインで、媒体を問わず様々な分野で活躍されているながはり朱実さんは、10年間の会社(修行)時代を経て2002年にフリーとなり、ながはり朱実制作室をスタート。自分らしい表現を確立するまでに多くの試行錯誤があったというながはりさんの根底には、常に変わらぬ「落書き好き」な遊び心とクライアントに対する思い入れがあり、それが作品に表れているように感じます。ながはりさんのこれまでの歩みを、長野のクリエイティブ集団・nana*tの活動も交えてお話を伺いました。

インタビュアー/坂田大輔 写真/ハラヒロシ

─主にどのような仕事をしていますか?

主にイラスト、グラフィックデザインです。もともとはグラフィックデザイナーだったのですが、最近はイラストの仕事のほうが多いです。あとグラフィックデザインの分野ではOKA学園で講師もしています。

─いつごろからイラストを描いていましたか? イラストレーターという職業を選んだのはいつ、なぜですか?

誰もがそうかもしれませんが、授業中ノートの隅に落書きするのが大好きでした。今もあまりそのころと気持ちは変わってないです。ひたすらエンピツや筆…今はタブレットが多いですが、思うがまま無責任に描くのが好きですね。 実際は、養護教諭になる学校に進学しました。保健室の先生もいいかなと思ったんですけど、教育実習に行って血がダメで挫折しました(笑)。でもそのとき運命的に出会ったのが「保険だより」でした。もちろん前々から見ていたんですけど、その「お便り」を創る楽しさみたいなのに出会って。それと同時期に周りの友人が熱く夢を語るのに触発されて「あたしも絵を描くんだ!」みたいになりました。
この勢いで就職活動に入って、長野市内のデザイン会社にたまたま就職して、10年間Macintoshにささげて来ました(笑)。

─10年間の会社生活はいかがでしたか?

もちろん仕事ですので、自分の意思と違うこともたくさんやりました。すでに2年目くらいでそういった仕事に疑問を持ってもう一度きちんと勉強しなおしたい!と思ったのですが、なぜか忍耐強く続けてしまいました。今とは違ってあまり積極的に自分を表現する活動もしていなくて、10年間ひたすら会社で修行という感じでした。でもその修行で得たことがたくさんあって、仕事に対する考え方を教わった大事な時期でもあるんです。会社にはほんとに恵まれてたと思います。

─影響を受けたアーティスト・作品などはありますか?

小さい頃から少女マンガは大好きでした。たぶんそこがベースになっていると思います。 小学校の時は高階良子とか多田かおるとか好きで、「フレンド」「なかよし」「リボン」「ちゃお」「マーガレット」は毎月見ていたし、中・高校もやっぱりマンガはよく見てました。今はあまり見なくなったけどちょっとずつ集めているのは上村一夫です。この人の絵や雰囲気は大好きです。あと北斎漫画。すごくいいです。最近影響を受けたといえばこの2者かな。マンガじゃなかったらあとは節操無く好きなものが多いです。中原淳一、寄藤文平、草間彌生、荒木経惟とか。「クール」や「かっこいい」より、土臭いものを求めます。

─ながはりさん自身は、ご自分の作品について「見る人の心を“チクっ”とさせる絵を、生活の中の“ちょっといいもの”に変えていきたい」というように表しています。ながはりさんの作品をみると、どれもそういった要素を感じることができます。そのような「自分らしさ」を確立することは自然にできたのでしょうか。それとも様々な試行錯誤があったのでしょうか。

ずっと試行錯誤です。 「この人いいなー」って思うとすぐ影響されちゃうし。恥ずかしながら…。ずっと広告やって、クライアントがいて、をやっていたから、自分の作品ってよくわかんないままずっと来ていたんですけど、ここ1、2年でちょっとわかってきたんですよね。それは、私は人が好きなんだなぁということですね。 きれいな部分もちょっとイヤな部分も。それがわかって絵を描くようになったらなんとなく自分らしさというか、これしかできないんだな的な事を思えるようになりました。ほんとはナチュラルテイストなものとか人を癒せるものとか描きたいって思うんですよ。でもなんかガビガビってした絵になっちゃう。でもそれも「自分らしい」って今は思えます。そういった部分を私の作品から感じ取ってもらえてすごく嬉しいです。

─ながはりさんのテイストを求めてお仕事をお願いされる方も多いのですか?

もちろんそういった場合もありますが、クライアントのイメージを伝えてもらって、そのテイストに合わせて描くことも多いです。強制的にこうしろと言われて描くのはあまり気が乗らないですが、その人の考え方ややり方がいい!と思って描く場合は自分でも楽しんで描けています。仕事の中では、気持ちのこもったクライアントに徹底的に叩きのめされて、20回ぐらい描き直した時もあります。それは得意な分野ではなかったのですが、クライアントが何度も何度も写真などの資料を見せて根気よくイメージを伝えてくれたので、心を込めて制作にあたることができました。打ち合わせが念入りな人だと、私ものめりこんでしまいますね。

─作品に落としこむまでのプロセスの中で、基準や方法はありますか?

紙に落書きして、それがだんだん形になっていって清書するか、Macのタブレットで仕上げるって事が多いです。仕事だと直しが入ることもよくあるのでそういうとき手書きよりMacで仕上げると融通が利きやすいです。
クライアントのイメージがある場合、そのイメージにいかに近づけるか、ただ似せて描くだけじゃなくて自分でも面白いと思って描けるように気をつけてます。

─ながはりさんも一員であるというnana*tとはどういったグループですか?

長野で活動しているグラフィックデザイナー、クラフトデザイナーなどの5人が集まったクリエイティブ集団です。この5人を中心に全国のいろんな方たちに協力してもらって、各地で展示会等を展開しています。

─nana*tでは、ざぶとん、Tシャツ、トートバッグなど、媒体にこだわらず様々な分野に取り組んでいますね。こういったアイデアはどのように生まれてくるのでしょうか。

だいたいはリーダーの中沢定幸さんの一言が一番大きいんですが。 今夏、軽井沢で「ペット2006」と銘打って8月24日から、5店舗に協力してもらって展示販売します。この「ペット2006」というのもなぜ生まれたかというと昨年の「トート2005」のときお世話になったパインズランチョネットさんに「軽井沢という土地柄、ペットグッズがもっとあったら良かった」といわれたんです。で、「じゃあ来年はペットだ」と。そんな感じで時代や場所、ニーズが大切なんだと思います。
あとは“つながり”ですね。今回のペットで箒(ほうき)の提案をするのですが、箒も老舗江戸箒屋さんに協力してもらってます。そのつながりも、前回のざぶとん2006の東京開催地がその箒屋さんだったりするんです。
いつも紙媒体で仕事していることが多いので、「nana*t」の活動は修行みたいな感じです。まだまだだぞ、あたし!って日々精進してます。こういう活動ってダイレクトに感想が伝わってくるので怖い反面、やっぱり楽しいです。

─長野という地域性は、ご自身の作品に影響を与えることはありますか?

nana*tで県外に行って直接色んな人達と話す機会が増えて、そこで改めて「長野」を強く意識しました。自分じゃ全然気が付かなかったことを見に来てくれるお客さんが逆に「長野らしい」なんて言ってくれたり。やっぱり長野でのびのびやってるのがでるんだろうなと思います。

─「長野」を意識してとりくんだ作品や企画などはありますか?

nana*tで「ざぶとん」をテーマにしたときは県外の方に「長野らしい」と言われました。 個人的には、県外で展示することを意識したとき「長野らしさ」を考えて、寒い土地だからできる質のいい紙「内山和紙」を使って絵を描いてみたり、実家の花をたくさん持ってきてみたりしました。県内にいるうちはあまり意識しない「長野」のよさも、県外で活動することによって強く意識するようになったと思います。

─長野のクリエイティブについてはどうですか?

「Webサイト作れないの?」とよく言われて、「Webはちょっと…」というと「何でもできるって言いいなさい!」って怒られることがあるのですが、なんでもできる人よりも、ちゃんとすみ分けてスペシャリストがいるほうが、長野のクリエイティブの向上に繋がるのではないかと思っています。そしてそれぞれの分野で、たとえば、Webの盛り上がりやグラフィックの盛り上がりがさらに横で繋がってくれば長野はもっと面白くなるんじゃないかなぁと思います。

─最後に、これからやってみたいことはありますか?

じっくり自分の絵と向かい合ってみたいです。 いろいろやったけど、やっぱり「絵」が自分に一番近い表現なんだっていうのを強く感じたので。 それからじっくりとはまた別に、毎日修行のように日々の事を描いていったりしたいです。

─ありがとうございました。

Profile

ながはり朱実 [ Akemi Nagahari ]
イラストレーター
url :nana*t

1972年中野市生まれ。長野市在住。株式会社ビー・クスに勤務しながら落書きをテーマにした個展を行う。2002年長野市立図書館前にて「ながはり朱実制作室」をスタート。個人事業の時間を自由に使える楽しさを知り、グループ展やスカバンド、アングラダンス、お笑い、映像(アニメーション?)など色んな事を試してみる。2004年よりnana*tの前身の活動となる「Tシャツ2004」を長野市内11店舗にて展開。 2005年には主要メンバー5人でnana*t結成。日本各地で展示販売スタイルの活動を開始。8/24からは軽井沢にて「ペット2006」を展開。他に個人名で信濃美術館「ヘアーデザイン展」のミュージアムショップにて顔ヘアーゴムを販売中。制作活動の傍ら、OKA学園にてグラフィックデザインの講師も兼任。

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Information

常に何かしら活動中です。チェックしてみてください。あと、秋に結婚します。