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Interview

定期的に更新するインタビューのページです。Webクリエイターだけでなく、
さまざまなジャンルの方々のインタビューを掲載していく予定です。


15 タテタカコ

2007.03.01 [ Musician ]

タテタカコ

3月に公開される映画「アルゼンチンババア」の主題歌に「ワスレナグサ」が起用される、飯田を拠点とするシンガー・タテタカコさん。自身のことを「ワシ」と呼ぶタテさんは、ステージ上の緊迫感ある姿からは想像もできないぐらい屈託ない笑顔で話しをしてくれる不思議で掴み所のないオーラをもった人だ。常に自分自身を破壊しながら問いただすということを繰り返し、不安定さと自由さが交錯する中から滲み出てくる唯一無二の存在感と表現力が、タテさんの魅力ではなかろうか。映画のはなし、新作アルバムの話しについて伺った。

インタビュアー/坂田大輔 写真/ハラヒロシ

─映画「アルゼンチンババア」の主題歌をタテさんが歌うのですね。おめでとうございます。どういった経緯で主題歌を担当することになったのですか?

ありがとうございます。東京でライブをやったときに、監督が聴きにきてくれたのがきっかけです。

─映画の主題歌づくりというのは、どんな感じでしたか?

原作と台本を交互に読みながらつくっていこうと思ったのですが、いいものをつくらなきゃ、つくらなきゃ、と思うとつくれなくて、あざといものしかでてこなくて、参りました(苦笑)。レコーディングのために、映画のためにって思うと、どうしてもよくつくりたいとか、いいことをいいたいとか思ってしまうのですが、それって結局ダメなんです。やっぱり根本的にはよく思われたいんですけど、でも、自分の中から出てきたものしか歌えないんですよね。誰かのためにっていう意識をなくして、自分のことに置き換えてみようと思ったときに、自然と出てきたものが曲になりました。監督からは特に「こういった曲で」というリクエストはなかったので、のびのびとつくることができました。

─映画の主題歌といえば、カンヌで話題になった「誰も知らない」の挿入歌として「宝石」が使われました。映画と非常にマッチしていたのですが、「誰も知らない」と「宝石」の関係について教えてください。

「宝石」は昔につくった曲なんですが、本当は封印したかったんです(笑)。今だからこそ、「過去の自分も自分でしょ」と考えて、矛盾していても昔の自分の歌を歌っていくことで、新たな自分を発見していくこともあるんですけど、そのときは、自信がなかったし、聴いてもらうのがいやだったので。ただ、以前是枝監督にお会いしていて、純粋に「また監督に会える!」って思ったので、ふたつ返事で「ありがとうございます」と言ってました(笑)。
映画のためにこの曲の続きをかいていったのですが、このときも映画のことで頭がいっぱいになってイライラしてもどかしくしていました。この曲をつくったときと同じように、白黒はっきりつけられない感じが、この映画の雰囲気とつながったのかな、と思います。

─ありのままを伝えていく感じなんですね。

ひとりでいると閉じこもっちゃうんです。同じ考えが堂々巡りするような。音楽を手段として人とつながっていって、うちのめされて、ボコボコにされつづけて、本当の自分が見えてくるんです。映画に2回取り上げられて、純粋に嬉しい気持ちもあったり、とまどいもあったりしましたが、映画に関わらせてもらうことで吉本ばななさんや奈良美智さんにも会えたし、いままで出会えなかった人、出会えなかった景色に巡り会えたのは本当によかったと思います。

─対バンで様々なバンドと出会いますね。

ジャンル関係なく、いろんなアーティストと対バンさせてもらっています。いきなりガツンとやられる想定外のものをみせつけられて、「本当に音楽やってるの?」と突きつけてもらったりとか、そうやって出会った人とはつながっていきたいし、また一緒にやりたいです。おっくうでめんどくさがりで、できれば閉じこもっていたい性格なんですけど、自分を突き動かしてくれるのはそこでしか味わえないものであって、それを知ってしまったんです。感動すると体が泣いちゃいます。いろんなことを、どんどん知りたいと思います。

─タテさんは飯田を拠点に活動していますね。地元のアーティストという感覚がありますか?

就職せずに、逃げ帰ってきたんです(笑)。「ちっくしょーいつか東京に戻ってやる」と思ってたんですけど。帰る場所は実家だけだったですし。はじめは地元や方言がイヤで、誇れる街とは思ってませんでした。でも、住み始めて、そこであった人とか、今まで見てなかった景色とか、外から取材に来てくれた人が教えてくれた飯田の街を知っていくうちに、あぁ、ないんじゃなくてただ見ていなかっただけだったんだと気づきました。いまは、自分の土地に帰ってくるとほっとするっ・・・というわけではないですが、あぁ「水がおいしい」って思ったりします。
でも、両方ないとダメだと思います。外に出て刺激を受けてボコボコになって自分を見つめ直す、地元ってそんな場所です。

─タテさんの一日の過ごし方ってどんな感じですか?

サイテーですよ(笑)。軽蔑されそう…(苦笑)。気がついたら昼だったとか。ツアーのほうが規則正しいです。普段は、いってみれば研修社員みたいなものですね。

─曲づくりはどうやっていますか?

夜とか… ツアー中の、ライブが終わったあとのベッドの中とかですね。

─今回のアルバムの曲は、相当早いペースで作ったそうですね?

いままでは何曲もストックがあったのですが、今回のアルバム用の曲、足りなかったんです。で、ヤベーヤベーと思っていると、結局「いい曲かかなきゃ」になって、全然ダメになる(苦笑)。全く新しいチャレンジですら、狙ってる、あざとい感じになっちゃいました。それを取り壊した瞬間、まったく排除できたときに、ほろほろとでてきて、それを歌にしました。
沖縄で録った「ワスレナグサ」は、レコーディング当日の朝になっても完成していなくて、焦っても焦ってもやらしい言葉しかでてこない状態だったんですけど、スタッフの方にひめゆりの塔へ連れていってもらって、そこで見た色濃く残る歴史に触れてかえってきたとき、頭の中にできあがってきたんです。「いま、録りたいです」っていってその勢いのまま録りました。本当はそのときの歌は仮歌だったんですけど、あとから撮り直しても、うまく歌わなきゃとなってしまったので、そのときのを使いました。

─タテさんのライブは、独特の雰囲気がありますね。お客さんとの関わり方で、意識していることはありますか?

そのままの自分でありたいのですが、ステージ上の自分は全く自然体じゃないこともあって、それ以上の自分やそれ以下の自分になってしまうこともあります。自分ひとり「最高!」と思って拳を上げてもお客さんの反応が違ったりとか、逆に最低と思っているのに反応がよかったり、いろいろです。そのままの自分を見てもらえるかどうか、歌いながら確認していって、お客さんも自分もちょうどフィットするというのが望ましいです。
ステージの上は、ウソをつけない場所です。ネオンホールもそうですけど、魔物が住んでいるんじゃないかと思います(笑)。

─対バンの影響は大きいですか?

はじめてスーパーネオンに参加したときは、衝撃的でした。何でもアリなんだなぁって。自分はいままで何をやってきたんだろうって思いました。でも、最終的には自分は自分、自分のできることをやるしかないって思い知らされます。あの人になりたいと思ってもダメ。フワフワしてしまうだけです。

─今回のアルバムは、沖縄と高知でレコーディングされたんですね。その理由は?

いままではずっと飯田でレコーディングをしてました。飯田でしかできないと思っていたんですけど、3回やったんだから他でもできると思って、外に出ました。沖縄と高知を選んだ理由は、いい出会いと、いい風土があったからです。友達に紹介してもらった沖縄のピアノの録音場所では、初めてその場所へ行って、ポンとピアノを押したんですよ。なぜだかわからないんですけど1音弾いただけで涙がでてきました。言葉で理屈で説明できないんですけど、ここでやりたいって思いました。高知ではスタッフとともに合宿状態で寝食をともにしてレコーディングにあけくれました。
地元であっても他の場所であっても、どこに行っても逃げられないんだと思いました。今回のアルバムのジャケットは、高知の藤島晃一さんの絵画「狼の皮を被った羊」を使わせていただいてます。私が初めて「買いたい」と思った絵です。

─曲づくりでの違いはありましたか?

いっそう自分をみせつけられたと思います。はじめは自分には何もないんじゃないかと思ったり、どうしていいのかわからないこともあって、何度も問いただしたんです。そんなときの自分は、周りから見ても最悪だと思います(苦笑)。自分がどう思っているかという意志がスタッフになかなか通じなかったりもしましたけど、自分のやりたいことを尊重してくれたり、「はやく」と一言もいわずに待っていてくれたスタッフに感謝しています。
今回は、ピアノが生きているということを初めて知りました。場所とか向きとか車輪の向きとかで違うんですね。瞬間瞬間を見計らって一番いい、というところで録るようにしました。

─タテさんが一貫して伝えていきたいことや生き方のスタンスありますか?

一貫していることは、自分をそのまま出しつづけていくこと。伝えるということはとても難しいので、聴いた人の捉え方は自由におまかせしたいです。それから、自分に知らしめたい。知らないことは知っていきたい、出会っていきたい、大事なものは忘れたくないです。
とにかく人と会うことが大事だと思っています。一人では感じられないことが、人と会うことでくつがえされる。音楽ってそのための手段じゃないかなと最近思います。

─Webは活用してますか?

普段は知る手段がWebしかないので、けっこう見てますよ。気まぐれ日記は書いていて、人を意識していますけど、今の出来事を書いていこうと思ってます。それから、人はどうやって表現しているのか気になるので、他の人のサイトも覗いたりします。あの人のようになりたいけどなれない、その繰り返しです(笑)。

─ありがとうございました。

Profile

タテタカコ [Takako Tate]
シンガー
url :Tate Takako on line

1978年7月24日生まれ、飯田市在住。
国立音楽大学音楽教育学科卒。2001年から地元のライブハウス「キャンヴァス」でライブ活動をはじめ、長野市「ネオンホール」や東京「スターパインズカフェ」などでの活動が評判を呼び本格的な音楽活動をスタートさせる。
2004年の夏に公開された是枝裕和監督の映画「誰も知らない」の挿入歌に「宝石が」起用され、映画出演も果たす。

Information

New Single「ワスレナグサ」
3/7発売 1,200円(税込)
ワスレナグサ
映画「アルゼンチンババア」主題歌。劇中で口ずさむアンデス民謡「花祭り」の美しい旋律から起草された叙事詩。
1.ワスレナグサ
2.泣き虫こよし
3.道程


New Album「イキモノタチ」
3/20発売 2,500円(税込)
イキモノタチ
「ワスレナグサ」を含む全13曲入りフルアルバム。
1.~雑踏~
2.身ひとつ
3.手の鳴る方へ
4.ワスレナグサ
5.押し問答
6.157
7.混濁
8.残影
9.月
10.雷
11.頬杖
12.道程
13.やわらかい風

タテタカコツアー2007
「狼の皮を被った羊」

全国18ヶ所をめぐるツアーです。長野県内の公演は次のとおり。
» 4月18日(火)松本アレックス
» 5月19日(土)松本 まつもと市民芸術館