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Interview

定期的に更新するインタビューのページです。Webクリエイターだけでなく、
さまざまなジャンルの方々のインタビューを掲載していく予定です。


17 村松弘敏

2007.11.26 [ Photographer ]

村松弘敏

長野市でフリーカメラマンとして活動されている村松弘敏氏。いち早くデジタルカメラを導入し、電塾でも運営委員をされるなど新しい技術を積極的に取り入れる努力を惜しみなく続けられています。一般向けの高性能なカメラが安価に手に入る時代に、プロカメラマンとしてどう向き合っているか、また、現在の活動などについてお話を伺いました。

インタビュアー/id=Nagano 写真/瀧内 貫

─カメラに触れたきっかけ、また、カメラにはまったきっかけを教えてください。

たまたま家にあったんです、父親が持っていたニコンFが。それがきっかけですね。一番最初に写真を撮ったのは幼稚園くらいだと思います。
実際に写真を撮り始めたのは中学校以降です。その時は「表現したい」という気持ちは全くなくて、単純に「カメラがあったから」です。持っていたカメラは私が生まれた頃に買ったものだったので古くさくて嫌だったんですが、たまたま顧問の先生から「すごくいいカメラなんだよ」と教えてもらって。それからですね。
思ったように写らないという思いから、雑誌を読んだりと研究をするようになりました。中学時代は視聴覚クラブでしたね。高校は写真部が休部だったので復活させて、所属していました。

─カメラマンという職業を意識し始めたのは? この仕事にはどのようにして就いたのでしょう?

高校に入ってからですね。その頃、時代的に写真ブームでした。フライデーなどの写真週刊誌が創刊された頃ですし、アルファ7000等が発売となり、カメラ業界が盛り上がっていました。
進学するにあたって、写真を撮ることを仕事にしたかったんですが親を説得することができず、東京工芸大学工学部写真工学科といって、レンズやフィルムを勉強する学科に入学しました。でも実際に写真を撮る授業は一年に一度程度しかなくて、実験や難しい話ばかり……。卒業しましたが、やっぱり撮る方をやりたくて、アルバイトしながら夜間の二年制専門学校に通いました。
二年になった時に、青山スタジオというレンタル撮影スタジオでアルバイトをするようになりました。そのまま就職して、24〜25才頃、そこで出会った杉山芳明というカメラマンに声をかけられ、アシスタントにつきました。そこで三年半ほど過ごしてから、長野にきました。

─なぜ長野に戻ってきたんですか?

東京ではアシスタントとしてですが、良い現場を見ることができました。杉山さん自身ビッククライアントの仕事を多く手がけていましたし。けれど「何か違う」というものをすごく感じていて、技術的なことには興味を持てなかったんです。
私の通った専門学校は、いわゆる芸術写真の学校だったんです。当時、重森弘淹(故人、写真評論家)が校長をやっていた東京綜合写真専門学校というところで、どちらかというとコマーシャル等の写真には否定的でした。自分も芸術写真の方に入り込んでしまっていたので、仕事の写真は「すごくつまらない写真撮っているなぁ」と思っていたんです。
実家に戻って、コマーシャル写真の仕事に携わることができるとは思っていませんでした。たまたま縁があり市内のコマーシャルスタジオを紹介してもらって、そこに12年勤めました。

─「何か違う」と感じていたのに、カメラマンの仕事を続けることに抵抗はなかったのでしょうか? その後、意識の変化はありましたか?

趣味の、自分の写真は撮り続けていました。当時、仕事の写真はちょっと下に見ていたんです。しかし、ある撮影の時に、デザイナーが並べた通りに撮影した後、もっと良いものがあると思って同じものを窓際で撮りました。クライアントが求めている写真が一番良いわけですが、自分の中の表現で撮影した写真が意外と評判が良くて、私が撮った写真で人に喜んでもらえるんだと、その時に感じたんです。それから物撮りとかも面白くなりましたね。気付くのが遅いんですけど(笑)。

─仕事の写真も面白いと思えるようになって、独立なさったんですね。具体的なきっかけはありましたか?

子供のお宮参りの時に、写真館で写真を撮ってもらったんです。知人のカメラマンで、すごく体調が悪くて仕事もしていなかったんですが、そんなこと知らずにお願いしたら引き受けてくれました。
コマーシャルのカメラマンはかなりのコマ数を撮るけど、写真館のカメラマンは撮っても3、4カット程度。体調も悪いので休みながらの撮影でしたし、正直「これで大丈夫なのかな」って思うようなものだったんですが、送られてきた写真のできがすごく良かったんです。初めて写真を撮られる立場になって、果たして自分の撮っている写真は人のためになっているのか?とすごく考えまして…それがきっかけですね。
仕事の写真においては「写真がいいね」と言われるより、「写真のおかげで売上げがあがった」とか「評判がいい」と言われる方が私としては嬉しいんです。

─『日和*hiyori』の表紙でポートレートを撮影していますよね。雑誌の表紙だとロゴが入ったりしますが、そういうものは意識して撮影しているんですか? また、撮った写真をデザイナーが料理していくことについて、口を出したくなりますか?

意識はもちろんあります。一番最初に撮った時「ロゴを入れるところがない」と非常に怒られまして(笑)。自分ではロゴを入れるところを意識して空けているつもりなんですが、人物の場合どうしても寄ってしまうので。
写真の使い方に関しては、基本的には任せます。ただ、前もって言ってもらった方がいいです。こういう撮り方がある、と提案もできますし。

─ディレクター的なことを求められることはありますか? 都会と比べ、地方ではひとりで複数の役割を持たなくてはいけませんよね。

『日和*hiyori』の表紙の場合は、撮影場所以外何も決まっていない場合が多く、どういう風に撮るかは基本的には私次第です。前号は寄っていたので今回はひきましょうか、という程度の意見はもちろんあります。
複数の役割を負担することは抵抗ないですね。
地方だから写真のレベルが低いとは思っていません。確かに、人の関わり方は違うとは思います。東京だって、すごい仕事もありますがそれはほんの一部で、今地方で仕事している私たちと同じような仕事をしている人もすごくたくさんいるのかなと感じています。

─人物撮影する時の、被写体との距離感やコミュニケーションのコツはありますか?

口で撮る(しゃべりながら撮影する)人が多いですが、自分はあまりしゃべらないですね。基本的に、きれいに撮るということはそんなに難しいことではないと思っています、テクニック的には。
自分としては、いつもと違ったところを出してあげたいな、という思いはあります。メイクって自分のクセがあるから決まった顔になりがちですけど、メイクさんにメイクしてもらうときれいに仕上がる。それと同じことかもしれないですね。

─写真で表現することにおいて、こだわっている点はありますか?

コマーシャルの場合は、クライアントの求めるものをきちんと理解できるか、ですね。抽象的な言葉で表現される場合も多いですし、撮影現場では細部にこだわりすぎて、本当に表現しなくてはいけないことを忘れがちになります。ほかにはテクニック的なことですが、例えば料理の撮影でランチなのかディナーなのかで撮り方や照明も違いますし、たくさん販売したいとか、高級感を出したいとか、そういうものでも違います。時代感とか、今感とか、そういうものも求められますしね。そういうものを把握するために何か特別な勉強をしているわけではないです。肌で感じるものだと思うので。
自分が趣味で撮る写真は、好きなようにやっています。できるだけ撮るようにはしてますね。以前は“作品は作品であるべきだ”と考えていたんですけど、最近はあまり気にしていないんです。(高飛車な意味ではなく)俺が撮ったから俺の作品なんだよ、というような感じ。昔ほどとんがっていなくなったのかな。

─WEB用の写真の需要は増えていますか? 紙との違いは意識されているんでしょうか?

基本はまだ紙ですが、WEBでも使うことが多いです。紙とWEBでは、処理が違うということはありますが、撮影自体は変わらないです。ただ、小さくなる場合が多いですよね。最近はWEB上で拡大して利用する場合も多いので、高い解像度が要求されたりもするようです。

─自分の写真をWEBで公開することに抵抗はないですか? カメラマンにとってWEBはどういう存在なのでしょうか?

全くないです。むしろやらなくてはいけないと思っています、営業的にも。個人作品として、WEBで作品を公開することにも、全く抵抗はないですね。
ホームページで写真の受注をしているところもたくさんあるじゃないですか。そこまでやるつもりはないんですが、名刺代わりという部分はあるので、やらなくてはいけないですね。最初に仕事に行く時にはブックを持って行きますので、まだクライアントからサイトを見せてくれと言われたことはありませんが。

─デジカメが普及して、一般人でもかなりいいカメラを持っています。プロとアマチュアの違いって何ですか?

例えば、自分でスノーボードをやっていて、スノーボードが好きで撮影している人には、私はとてもかなわないです。感じ持っているものだったり、スノーボーダーが何を求めて、どういう写真がかっこいいと感じるのかということをすごくわかっているから。そういうものを、私たちは撮れないんです。
仕事の写真におけるプロとアマチュアの違いは、きちんとものを正確に表現できるかどうかだと思います。
現在、カメラマンの需要は少なくなってくるとは思います。ハードもソフトも良くなってきていて、撮影した写真を後処理で整えることができるようになってきていますから。お金を払って写真を発注していただけるようになるかどうかということが、これから写真で生計を立てていくためには必要なことだと思います。それはすごく意識しています。下手したら、使っているカメラ、一緒ですからね。そういうのもあって、バックタイプのデジタルカメラを導入した、というのもあります。バックタイプの画像は次元が違うくらい画質が違いますからね。

─仕事における撮影はクライアントから被写体を指定されることが多いと思いますが、個人的に今後撮りたい被写体はありますか?

今住んでいるところをちゃんと撮りたいという気持ちはあります。写真は都市文化だから、東京とか、パリとか、ニューヨークでしか成立しないものだという先入観がありました、10年ほど前まで。1995年に、学生時代、お金がなくて行かれなかったパリ写真月間にいきました。写真を見ながら街をまわっていくうちに、写真を表現として伝えることは長野でもできるんじゃないかと気がついたんです。考え方が変わって、吹っ切れましたね。
長野は風光明媚なところが多いので写真を撮っている人は多いですが、そういう写真ではない街の写真を撮りたいですね。少しずつ撮り始めてはいるんです。

─最後に、村松さんが運営に携わっている電塾について教えてください。

5年くらい前に独立してすぐ、デジタルカメラを買いました。Photoshopは前の会社でもバージョン3くらいから使っていたので、結構古いです。ただ当時はデジタルカメラがなくて、フィルムをスキャンしていたんですが、それが嫌だったんです。カメラマン的にいうと、ポジの段階は完成形だからそれをいじるという感覚がわからないし、やりたくなかった。だからPhotoshopはほとんど使っていなかったんです。
前の会社時代からデジタルカメラを早く入れた方がいいというのは感じていたので、頼んで導入後、そのカメラで撮影された画像を見てから可能性というか、たとえば、古いレンズの味も処理することによってデジタルカメラで表現できちゃうのかなと思ったんです。それからかなりデジタルにはまりました。
独立して初めて買ったカメラがコダックのDCS760でした。導入の決め手はドライバーソフトの出来の良さでした。さぞすばらしい画像が出るかと思ったのですが、当時の画像はPhotoshopでの処理が必須だったんです。一日撮影すると夜寝ずに画像処理をしていましたね。若いうちは良いけど、これを続けていたらいつかは体を壊すなって思いました。 ただ、周囲に比べるとデジタルカメラの導入が早かったので、画像処理の自信はありました。
たまたま長野で電塾の勉強会があって参加したら、高いと思っていた自分のレベルが全然昔のレベルで、もっと楽できる方法があるということを教えてもらったんです。初期段階はすごく勉強していたんですが、ある程度になると力がついたと思い込んでいただけで、全然そんなことなかったんです。電塾は毎月やるというので、毎月勉強に行くようになりました。長野でやり始めて3、4回目から参加しています。勉強会の内容はガツンと頭叩かれたような感じでしたね。そのうち運営委員をやれということになった、という感じです。
毎月勉強会を開催していますので、興味があったらぜひ参加してみてください。

─ありがとうございました。

村松弘敏

Profile

村松弘敏 [Hirotoshi Muramatsu]
Photographer

url : 村松弘敏写真事務所
電塾長野支部

昭和39年:長野市生まれ、新潟県妙高高原で育つ
昭和57年:東京工芸大学 工芸部 写真工学科(現 画像工学科)入学
昭和61年:東京綜合写真専門学校 第2学部 入学
昭和63年:青山スタジオ 入社
平成元年:杉山芳明写真事務所 入社
平成 3年:(有)アドフォート・トリム 入社
平成14年 5月:同社退社 現在に至る

主な撮影分野

ガッチリとした商品撮影が得意。宝石から、人物まで、かなりオールマイティに対応します。短時間で大量の撮影にも臨機応変に応えます。特にモデル、人物撮影は現在長野で活躍する、どのカメラマンより場数を踏んでいると自負しています。 ロケからスタジオ撮影まで、幅広い撮影ニーズに応えます。

今までの主な撮影した被写体

レストランメニュー、会社案内、ホテル季刊誌、政府刊行物、社内報表紙、企業ポスター、百貨店DM、チラシ、ギフトカタログ、パンフレット、雑誌表紙等

Digital

6年前から仕事上にデジタルカメラを使用。phase one製2200万画素デジタルカメラを導入。デジタルでの入稿にも数多くの経験を積んでいます。デジタル写真での印刷をはじめ、WEB上で使用するなど、疑問点、お問い合わせなどお気軽にご連絡ください。