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Interview

定期的に更新するインタビューのページです。Webクリエイターだけでなく、
さまざまなジャンルの方々のインタビューを掲載していく予定です。


23 瀧内貫

2009.10.21 [ Designer ]

瀧内貫

ロングライフデザインを考え、伝えるD&DEPARTMENT PROJECTの長野店『D&DEPARTMENT PROJECT NAGANO by COTO』を9月にオープンさせた瀧内貫氏。運営会社である株式会社コト社の代表を務める瀧内氏に、オープンまでのいきさつと今後の展開についてお話を伺いました。

インタビュアー/坂田大輔 写真/ハラヒロシ 編集/志村純子

─まずはD&DEPARTMENT PROJECTについて教えてください。

"ロングライフデザイン"をキーワードにした、家具、キッチン雑貨、食器、文具など生活雑貨のセレクトショップです。
新品・中古を問わず、長く使い続けることのできる商品を紹介・販売しています。また、ショップだけでなく、県内のデザイントラベル情報を紹介するカフェやギャラリースペースを併設し、多様なデザイン活動を展開します。 勉強会やイベントの開催も積極的に行っていく予定です。

D&DEPARTMENT PROJECT

D&DEPARTMENT PROJECT

D&DEPARTMENT PROJECT

─なぜD&DEPARTMENT PROJECTに参加しようと思ったのですか?

参加しようと思ったというか...自分が何をやりたいかということを整理していく中で、D&DEPARTMENTが当てはまった、という感覚ですね。
僕は、自分が長野という地を選択して住んでいると思っています。土地を持っているとか、親がいるとか、妻の両親がいるとか、そういった縁故がこの土地にはない。けれども、時間の流れ方とか、土地の雰囲気とか、何かをやったときに伝わる速度感とか、関わっている人たち...そういったものが自分に合っているし、好きだという理由でここを選んでいるんです。
自分が選んでいる場所や土地に対して何ができるかということを考えました。一方で、この土地だけで何かをやっていくということのむずかしさを感じていました。東京など大きい経済圏と繋がりながら自分のやりたいことをやるというスタンス、そこにマッチしたんです。D&DEPARTMENT では、地方と東京の商品を両方取り扱っています。東京のフォーマットをそのまま当てはめる店ではなく、その土地らしさを取り入れていく、というところ。
"その土地らしい"というのは、逆をいえば"その土地にしか通用しない"ということと表裏一体である可能性があるので、全国的に通用するジャッジ、つまり東京を発信として利用できる部分が加わって...簡単にいうと都合がよかったんですが、地方であるところと、東京を利用するところのバランスに共感しました。
もともと、お店のファンであったことは間違いないです。単純にファンだという次元もありつつ、でも、ファンだからやっているということではない。やりたいことのひとつの手段としてD&DEPARTMENTがある、ということだと思います。

─そもそも、瀧内さんとD&DEPARTMENTとの出会いは?

植木鉢を探していたんです。「長野にかっこいい植木鉢がない!」と思ってネットで探していたら、D&DEPARTMENTのショップがまたたまひっかかったんです。そのころ、D&DEPARTMENTはグリーンなどの販売に力を入れていた時期で。サイトを見ていたら自分好みの良いものが多くて、とりあえず植木鉢を買って。それがきっかけですね。

─瀧内さんはもともと会社員だったわけですが、退職するとき、すでにD&DEPARTMENTの存在があったわけですか?

まったくないですね。父の仕事を手伝うための退職でした。ホテルの手伝いをしたり、デザインをしたりしながら今後模索している中で、D&DEPARTMENTの「d47」を知ったんです。
会社員時代に学んだことは、今すごく役立っています。実際にお店を経営してみて役立つ基本的なビジネススキルは、あの時代に相当量鍛えられたなと感じています。

─オープンよりもだいぶ前にmixiでコミュニティを立ち上げたことが印象深いのですが、コミュニティを立ち上げるだいぶ前から準備していたのでしょうか?

いいえ、立ち上げる前日にナガオカさんに初めてお会いしました。
ナガオカさん自身「インターネットでコミュニティを作ることは、情報をうまく集める方法として可能性があるのではないか」と思った時期と重なっていたんです。ご本人も実名でmixiに登録して、情報を集める活動をしていて。
僕はもともとファンだったということもあってブログやサイトを見ていて、47都道府県に1店舗ずつ作るという「d47」を知って、とりあえず会わせてくださいとメールを送り、お会いし、そのときに「とりあえず進めてみましょう」ということになったんです。翌日にコミュニティを立ち上げました。

─お会いした当日にGO...そんなにスムーズに決まるものなのですか?

それなりに準備をして行きました。ほかの店舗から話を聞くと、かなり順調なスタートだったらしいですよ。振られてアタックして、また振られてはアタックして...という方々が多い中で、初回で「話を進めてみましょう」となった長野店は珍しい例だそうです。
ナガオカさんはメディアで考えを発信しているので、それを把握することはできます。だけど、自分の考えていることはナガオカさんに伝わっていない。だから僕は「長野でやるならこういうことをやりたい」という企画書を作って持って行きました。それがスムーズに進んだ要因だと思います。

─ナガオカケンメイさんってどんな人ですか?

ナガオカさんは、気さくな人。でも厳しい人。デザインや仕事面では目利きな人です。すぐに判断してしまう。
基本的に"デザイン好きな人"ですね。ナガオカさんは、デザインの在り方がが間違った方向に向かっていると感じているんです。著名なデザイナーがデザインしているものが重視され使い勝手が無視されている家電や住宅の風潮や、良いデザインでも消費社会の中ですぐに捨てられてしまう現状を、ひとりのデザインファンとして変えていきたいと考えています。それに対して自分に何ができるかと考えたときに"正しく伝える売り場を持つこと"がひとつの答えなのではないかと思い立ち、D&DEPARTMENTの活動がスタートしたんです。

─では、D&DEPARTMENTは正しいデザインの在り方を伝える場なんですね?

それだけではないです。正しいデザインの在り方は、すでに答えが見つかっているわけではないので、一緒に探して、勉強していこうというスタンスですね。地方に埋もれている良いデザインを探したり、正解を探す場だったり。その拠点としてショップがある。
書籍やウェブで紹介するだけでなく、経済活動として成功する方法でやっていこう、ショップとしてのコミュニケーションで伝えていこう、ものをきちんと使ってもらうためにきちんと伝えて売ろうというスタンスです。

─店舗準備にはかなり時間がかかったということですが。

そうですね。おととし(2007年)の11月末にナガオカさんとお会いして、オープンが今年(2009年)の9月。約2年ですね。

─準備に時間がかかった要因は?

自分の中の甘さですね、やっぱり。「こういうことやりたい!」といっていただけで、現実を見ていなかった。考えが中途半端だったのに言い出してしまったので、あいまいな部分をきちんとした線にしていくという作業に時間がかかりました。
もうひとつは物件が見つからなかったということですね。僕たちの理想とする建物がなかったんです。目的を持ってきていただく場所ということで、繁華街からは少し離れたところ、というのがD&DEPARTMENTの理想でした。街の風景になっている建物であるとか、新築はNGとか、共同テナントもNGとか...条件があるので。

─場所が決まってからオープンまではどのくらいでしたか?

2ヶ月経っていないですね。本部すら疑っていました。「とりあえずやってみなよ」とは言っていましたが、心の中では「無理でしょ」という感じで(笑)。無事にオープンした際は「奇跡だ!」といわれました。通常は3ヶ月程度、時間をかけているみたいです。

─mixiのコミュニティや公開ミーティングといった、店舗オープンに向けての活動が独特だったと思うのですが?

計算ではないです。そのときに何が適切かを考えながらやっていっただけです。
自分に経験がないので、自分の中に方法論がなかった。その状態でどうすればよいかと考えたときに、D&DEPARTMENT PROJECTらしいやり方として、とりあえず手を動かしてみよう、足を動かしてみようという感覚でした。
他県のD&DEPARTMENTは会社で立ち上げようとしているのでスタッフがいるんですが、僕は個人でやるといい出したので人がいなかった。とりあえず、興味ある人がどれくらいいるか調べてみようという感じで、2008年の2月にミーティングイベントという形で開いてみたら、結構集まったんです。その流れで公開ミーティングをやってみようと思って。人を探しながら物件情報や長野の情報を集める仕組みであり、同時に宣伝・告知にもなる。また、D&DEPARTMENTを始めようと思ったきっかけでもある"長野の気付き"の場にもなると思って公開ミーティングを選択したんです。でも回数を重ねるほど公開性はなくなってしまって、メンバーが固定化してきて参加しづらくなってしまったりもしました。
次のステップとしては、みんなで長野にどういうものが埋もれているのかを探りにリサイクルショップを回ったり、自分たちでコースやパンフレットを作ってトラベルしてみたり。そういったことをしてきました。
こうやって繋がってきた人たちとやればやるほど考えが収斂していく中で、場所が見つからないというジレンマは常につきまとっていましたね。

─オープニングにもたくさんの人が集まっていましたよね。人集めが上手なのかなと思うのですが。

基本的に人好きだけれど、人づきあいが得意なわけではないんです。どちらかというと苦手ですね(苦笑)。たぶんやろうとしていることと、やっていることのむちゃ感が「手伝ってやらなきゃ」という気持ちにさせているだけかと(笑)。
ただ、ワークショップなどをやっていく中で、楽しんでもらわなきゃ意味がないという意識はありました。そういうことは考えてますね。
例えば、店舗の看板は学生の相当なる犠牲の上に完成したものなんですよ。その代わり、話す時間を提供しました。一対一でナガオカさんなどと話す機会はなかなかないじゃないですか。お金を提供することはできないけれど、工夫や努力次第で別の価値を提供することはできるんですよね。そういうのはやっていました。

─D&DEPARTMENTのキーワードはロングライフデザインですが、長野のロングライフデザインって何でしょう?

長野のロングライフデザイン...まだわかっていない、手探りです。商品の選び方も、勉強しながらという感じです。足で探して、ひたすら話を聞いて。その繰り返し。
結局、情報発信がうまくいっていないんですよね。例えば、同じ県内でも木曽の情報は長野市まで入ってこない。だから足を運んで、情報を収集して、見つけてくるより他ないんです。現地に足を運んで、中心となっている人物を探し出してその人の話を聞いて、枝葉が分かれたらしらみつぶしに調べていきます。ロングライフデザインという条件をクリアできるかどうか。地道な作業です。でも、そういうものじゃないと、売ろうとしても売れません。長く使ってももらえない。
2Fのショップの商品は、最終的にナガオカさんが選んでいます。商品選定会があるので、こちらで提案して、審査が通ったものだけが店頭に並ぶというルールです。実感を伴った提案であることが前提なので、自分で購入して、自分で使ってみて、その上で提案するという流れがあります。

─オープンして三週間。これまでの感触はいかがですか?

まだまだです。予想していた範囲の下限、という感じでしょうか。D&DEPARTMENT自体がまだまだ長野に浸透していないですし、立地的にもふらっと立ち寄る感じではないですし。もう少し時間はかかるかなと考えています。

─D&DEPARTMENT PROJECT NAGANOとして、今後のイベントなどは決まっていますか?

ここの立地だと"何か"を仕掛けないとお客さまは来てくれないと思っています。ですから、D勉強の会(自分たちの商品勉強会を公開で行うというスタンスのもの)や、デザイントラベルツアーの開催、ギャラリーとしての場所の提供などを計画しています。年内にも、勉強会とギャラリーと観光ツアーを各ひとつずつ開催する予定で準備を進めています。
id=Naganoの勉強会をここでやってもいいですよ、コーヒー飲みながら。

─D&TRAVEL CAFEというのは?

長野のデザイントラベル情報を集めたカフェです。スタッフの誰に聞いてもおすすめのトラベルプランを提案できるような、観光案内所の機能を持たせたいんです。
長野はもったいないところがすごく多い。この風景とこの商品があるのに、サービスが不十分だったり、店舗から干してある洗濯物が見えていたり(笑)。全国から人を呼べる可能性があるのに埋もれている。そういう情報に気づいてもらえる場所にしたい、それをやり続けている場所になりたいと思っています。いつ来ても何か新しい情報があるような。
これはまだ本部にOKももらっていない構想に過ぎませんが、D&TRAVEL CAFEを県内のいくつかの都市に作りたいと思っています。

─各都市に作る意図とは?

旅の出発点になってほしいんです。「長野っていいところだよね」とわかってはいても、どこに行ったらいいのかわからない。そういう人たちが D&TRAVEL CAFEにきて「どこかいいところありますか?」と聞いてくれればいい。スタッフ全員が「この時期だったら、D&DEPARTMENTとしてはここがおすすめです。このコースで回れば、デザインという視点においても、旅という視点においても満足してもらえるような旅ができます。」と案内できる状態にしたいです。
"観光"は長野県の経済にとって一番のキーだと思っていて、このデザイントラベルという新しい切り口で見せることによって、別の層の人たちが県内を回り出すことにつながればと思っています。デザインがいいということが人を呼ぶことにつながることがわかれば、住んでいる人や観光に携わっている方にとっても気づきになると思っています。

─最後に、何か伝えたいことはありますか?

とりあえず来てください(笑)。
まず来てもらって、触れてみてください。触れてみなければわからないので。

─ありがとうございました。



D&DEPARTMENT PROJECT

Profile

瀧内貫[Toru Takiuchi]
Designer

1978年 大阪生まれ。長野育ち。
長野工業高等専門学校環境都市工学科を卒業後、設計事務所、食品会社などを経て、2008年 フリーに。2009年 株式会社コト社設立。

デザインを使った地域活性化、地域貢献が目下のテーマ。
D&DEPARTMENTを47都道府県につくるプロジェクト「d47」の長野店を2009年9月に開店。

Link

D勉強の会
わかりやすい珈琲

日時
2009年11月3日(火・祝)17:00~(16:30開場)
場所
D&DEPARTMENT PROJECT NAGANO by COTO 1階「D&TRAVEL CAFE」
※イベント開催のため、カフェは16時までとなります
参加費
1,500円(珈琲・お菓子付き) 
定員
30名

お申し込み・お問い合わせ 長野店店頭またはお電話( 026-225-9529 )へ。

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