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Interview

定期的に更新するインタビューのページです。Webクリエイターだけでなく、
さまざまなジャンルの方々のインタビューを掲載していく予定です。


26 松井美幸

2010.06.09 [ Announcer ]

松井美幸

テレビ信州の夕方生放送番組『情報ワイド ゆうがたGet!』にて月曜から木曜の放送を担当している松井美幸さん。日々番組を通して笑顔と元気を届けてくれる松井さんに、アナウンサーという職業、テレビを通して情報を伝えるということ、番組とどう向き合うかなどについてお話を伺いました。

インタビュアー/坂田大輔 写真/ハラヒロシ 編集/志村純子

スタジオ写真提供/テレビ信州

─松井さんは現在アナウンサーとして活躍されていますが、アナウンサーになろうと決めたきっかけは何ですか?

「声がいいね」といわれたことが一番のきっかけです。高校のとき放送部に所属して、運よく全国大会に行くチャンスももらいました。ただそのときは、アナウンサーになりたいというよりも、声を使う部活もいいかなという、軽い気持ちでした。大学に入ってイベント司会のアルバイトをしていたのですが、そのときに「声がいいね」と。大学3年生になる直前に進路をどうしようと考えたとき、自分の長所やほめられる点て何だろう?と考えて、この言葉がよみがえりました。その流れでアナウンサーを目指してみようかなと思いました。

─子どものころから、人前で話したりするのは好きだったのですか? どんな子どもでした?

得意ではなかったです。人前で話すのが好きというよりは、目立ちたがり屋でしたね。中学校では生徒会副会長をやってみたり、高校では放送部で校内放送をやってみたりとか。
田舎で、のびのびとした環境で育ったので、家でおとなしく遊ぶというよりは、外で男の子と遊んでいるような子どもでした。

─アナウンサーは狭き門というイメージですが、やはり就職活動は大変だったのですか?

そうですね。キー局は何千人と応募がありますので、写真写りも気にしましたね(笑)。
アナウンサーを目指す人は、たいがい東京の大学に行くんですよ。私は、大学を選ぶときはアナウンサーを目指していなかったので、やりたい勉強があった広島の大学の国際学部に入りました。
地方大学からアナウンサーを目指すのはかなり大変でしたね。今ほどインターネットで情報を共有できるわけではなかったので、自分で手探りで集めるしかありませんでした。仲間もいなかったですし。
私は20局ほどの面接を受けました。広島から全国各地のテレビ局へ行ったので、体力的にも経済的にも大変でした。

─アナウンサーの入社試験も、一般的な企業の試験と同じですか?

まったく違いますね。ニュースやナレーションの原稿読み、フリートークの試験があります。フリートークのテーマは各社さまざま。「ハンガーと歯磨き粉のついた歯ブラシを関連付けてトークしてください」なんてものもありました。そんな無茶な!と思いますよね。何を話したのかはっきり覚えていませんが、頭が真っ白になったことだけは鮮明に覚えています。もうひとつ印象的だった試験としては、「前後左右、四方向にお辞儀をしてください」というものがありました。
ちなみに、テレビ信州の試験はニュースの原稿読みに、写真のパネルを使ったフリートークが課題でした。

─入社してから番組に出るまではどのくらい時間がかかりますか? また、どんな訓練をするのでしょう?

私は3月には長野に引っ越してきて研修に入りました。研修は1か月程度ですね。5月前にはニュースを読んだり、小さい枠の番組に出演しました。そこから徐々に、ですね。
私の場合は、なまりを直すことを一番最初にいわれました。福井県はとってもなまりが強いんですよ。広島に4年間住んでいる間にも広島弁をたっぷり吸収してしまったので、自分が標準語だと思って話していたことも「それ違う!」って(笑)。今でもまだなまってるって指摘されることもあるのですけれど。
情報を発信する側として、視聴者が混乱しないか、誤った情報を手にしないかという、メディア・リテラシーを学びました。

─アナウンサーにはどんな資質が必要ですか?

人の話を聞くのが好き、人と会うのが好き、人に興味があること、ですかね。しゃべりがうまいかどうかは訓練次第ですから。
地域の方々をはじめ、政治の世界で活躍されている方、芸術の世界で活躍されている方。アナウンサーはいろいろなジャンルの方とお会いする機会が多いです。つながりができることが取材の楽しさ。そういうことを楽しめることが大切かなと思います。

─松井さんといえば『ゆうがたGet!』ですが、どんな番組か教えてください。

夕方の生放送番組です。ジャンルでいうと情報番組にあたります。時間帯的に主婦やご年配の方が多いですが、主にその方たちに向けて"今"をわかりやすくお伝えする番組で、『見て、聞いて、参加して』が番組コンセプトです。月曜から木曜までを伊東陽司アナと担当しています。

―『ゆうがたGet!』を担当していることに対して、何を感じていますか?

『ゆうがたGet!』は楽しいです!...と同時に、1999年から11年以上続いている番組を担当しているというプレッシャーも大きいです。
視聴者のテレビ局に対するイメージは自社制作番組の影響が大きくて、『ゆうがたGet!』を見て「テレビ信州ってこんな会社なんだな」と認識される方も多いのではないかと思っています。

松井美幸

─『ゆうがたGet!』を担当することの楽しさは、どのようなことから感じますか?

毎日、臨場感のある番組を多くのスタッフと一緒に作り出す、生みの楽しみがあります。また、いろいろな顔を持てるところが楽しいです。真っ赤なカニのかぶり物をしたり、ピンクのつなぎを着て畑作業したり、ウエディングドレスを着て花嫁の気分を味わったり、ロッククライミングしてみたり、流行のギャグをまねしてみたり。幅はかなり広いですね。
あとは、人の想いを電波にのせることができる、ということです。

─人の想いを電波にのせる、とは?

以前、母の日にむけての取材で、カーネーション農家のお父さんが長年連れ添った奥様に感謝の気持ちを伝えるために、生まれて初めて内緒で選んで洋服をプレゼントをしてあげるというものがありました。奥様だけじゃなく贈ったお父さんも涙して、互いの存在や愛を確かめ合った。見えない想いを形にして、それを誰かに届けることができる。それができたときは、嬉しくなりますね。

─忙しいイメージがあるのですが、自由になる時間はあるのですか?

今は、月曜から木曜まで夕方の生放送番組を担当しているので、比較的規則正しいスケジュールですね。放送のある日はほとんど打ち合わせです。午前中からその日の放送の準備やディレクターを含めた流れの打ち合わせをし、お昼休みをとってからメイクなどの準備に入ります。再びスタッフ全員で打ち合わせを行い、15時からリハーサル、16時半に本番を迎えます。
東京のテレビ局のようにたくさんスタッフがいるわけではないのでしっかりとした台本があるわけではなくて、5、6枚の進行表がある程度なのです。オープニングがあって、ここでVTRを流して、ここにトークをはさんで...という流れのみで、何をしゃべるか、どんな流れにするかは伊東と私で考えます。基本はフリートークですね。
終了後にはその日の反省会を行います。ほぼ1日『ゆうがたGet!』に携わっています。
月曜から木曜まではスタジオでの番組進行を担当していて、金曜日は取材に出ることもあります。取材では視聴者の方の声を直接聞くことができたり、さまざまな体験をしたりと、スタジオとはまた違う緊張感があります。

─アナウンサーも番組づくりに参加しているのですか?

取材では「こういう展開をさせたい」といった、自分の考えも伝えます。昨年までは自分のコーナーで農業をしていたので、どうやって農業を楽しく見せるか、同じことの繰り返しにならないか、ディレクターと意見を出し合いながら収録し、編集のときも話し合いをしていました。取材は、構成がすべて決まっているわけではないので、現場で意見交換をしながら、一緒に番組を作っています。
企画面では、企画そのものを提案するというよりは、ネタを提出するという感じです。企画が決まったらそこで終わりではなく、取材中こそ、あれこれ考えますね。かなり頭を悩ませたにも関わらず、編集が終わって放送するときには、悩んだところや体を張ってやったギャグがあっさりカットされていたりするんですけどね...。

松井美幸

─自分の出た番組はチェックしますか?

チェックしますね。ここが良くなかったなというのは本番中にわかっていますが、、何がどうダメだったか、きちんと視聴者に伝わっているかどうかというのは確認しないと一方的になってしまうので。そこは大事ですね。
会社で毎日行っている反省会は、流れやVTRのデキも含めてどうだったか、口頭での確認なので、自宅でひとりで見ます。見るのは怖いんですけどね。ここで失敗するということをわかっていて見なければいけないですよね。それをあえて見るというのは、傷口に塩を塗られるかのようです(笑)。

─アナウンサーとして大切にしていることは何ですか?

私たちの仕事は視聴者ありきのお仕事ですので、いかに見ていただき、楽しんでいただくかを大切にしています。テレビをつけて「面白いな」って思ってもらうことはもちろんですが、さらに「こういうことは知らなかったな、役に立ったな」「見てよかったな」「勉強になったな」という気持ちがプラスされれば一番ですよね。見てくださる人が楽しんでくれて、元気になってもらえることが一番うれしいです。
一緒に『ゆうがたGet!』を担当している伊東は、番組スタートのときから12年目になります。やり続けていても初心を忘れないというか、いかにして番組を楽しんでいただくか、有益な情報を自分たちが届けられるかということを常に考えている。視聴者を思う姿勢を持ち続けているところはすごいと思います。

─テレビは一方的に伝えるイメージが強いのですが、視聴者にどう届いているかを感じることはできるのですか?

視聴者の声は、取材のときや番組のコーナーの応募はがきやお手紙、お電話で届きます。発信することの方が多いですが、そういった部分で、見てくださる方々とのやり取りができていますね。お褒めの言葉いただくこともあれば、お叱りやご指導をいただくこともあります。
最近、『ゆうがたGet!』を見てくれている小学6年生の男の子から丁寧な手紙をいただきました。『番組に癒やされます』と。現代は小学生も癒やしを求めているのかなぁなんて、勝手に思ってしまいましたが、癒やされていると思ってもらえるのは嬉しいことです。
農業をしていたときは、農業初心者の私に『自分の家ではこうやって野菜を育てている』といったアドバイスを寄せて下さる方もいました。視聴者のみなさんは、こちらの発信している情報をしっかりキャッチしてくれているのだなと嬉しく感じます。

─情報を伝える際に心がけていることはありますか?

クスッという面白さや、自分の感性、共感をプラスするように心がけています。情報源となっている人の気持ちを代弁し、自分の気持ちも添える。見てくださる方の「あ~、わかる、わかる」というのを目指しています。

─女子アナがタレント化しつつあると思うのですが、見られることについてはどう感じていますか? プライバシーは保てますか?

人間性も大切だと思いますが、アナウンサーはタレントさんではないので、今ある情報を伝えることが役目だと思っています。"自分"を見てもらうのではなく、自分というフィルターを通していかに情報を手にしてもらうか、です。
有名タレントさんのように、帽子にサングラスにマスクに...といった変装をして外出するなんてことは全然ないですよ。普通に歩いてます。たまに声をかけていただくこともありますが、本当にたまにですよ。

─体調管理が大切なお仕事だと思います。どんなことをしていますか?

一年中、うがい・手洗いは欠かさないとか、マスクを使用するとか、乾燥に気をつけるとか。ごくごく一般的なことですね。
『ゆうがたGet!』を担当して3年目になりますが、お休みしたのは一度だけです。日曜の夜に突然ぎっくり腰になってしまって(笑)。

─アナウンサーさんはいつも明るく元気で、落ち着いていらっしゃるように見えます。ぜひテンションの保ち方や緊張対策を教えていただきたいです。

テンションは、本番前にスイッチを入れる感じです。「えいっ!」と(笑)。
緊張対策は「あぁ緊張するー」という風に考えず、「自分も楽しもう、見ている人に楽しんでもらおう!」という気持ちを意識することです。それでも手が震えたり、頭が真っ白になってしまうこともありますよ。そういうときはとりあえず落ち着くようにして、「大丈夫、大丈夫」といい聞かせ、段取りなどを考えて"緊張している"ということを忘れるようにします。

─取材で初対面の人と打ち解ける秘訣はありますか?

相手によって、ですよね。最初からオープンな方もいらっしゃいますし。
緊張している方には、焦らずに笑顔で「大丈夫ですよ」と。忍耐力は必要です。冗談のひとつでもいい合えるような雰囲気にいかにもっていくか、そこはもう駆け引きですよね。
逆に、私が緊張してしまうこともありますよ。渡辺謙さんに映画のインタビューでお会いしたときは、もうダメでしたね(笑)。

─系列局のアナウンサーとの交流はあるのでしょうか?

共同企画や勉強会があります。福井放送に信州出身のアナウンサーがいて、私は福井出身の信州のアナウンサーで、お互いに状況が似ている上に同期なので仲良くしています。交流というとやっぱり同期が多いです。

─ブログを書かれていますが、テレビ以外のメディアはどう考えますか?

テレビだけではなく、ほかのメディアも大切だと思っています。
ブログは、アナウンサーをより身近に感じてもらおうということで始めたのですが、情報の選択が難しいです。いろいろ考えてしまうと、なかなか更新できなくて...。
一般には「テレビを見たよ」って言葉が多いのですが、知人からは「ブログ見たよ」といわれますね。

─プライベートはどんなふうに過ごしていますか?

休みの日にやっていることといえば、写真を撮りに行ったり、自転車(ロードバイク)で走ったり、温泉にいったり。長野県は広いので見るところがいっぱいです。自分でも知っておきたいので、プライベートでも各地を旅して、いろいろな地域を見ておこうと思っています。
お料理も好きです。毎日番組の中で料理コーナーも担当させていただいているので、すごく恵まれていますよね。毎日お料理教室に参加しているようなものですから。自宅で作ってみると先生とは違う代物だったりしますけど(笑)。でも、おかげさまで家事検定は最高位の三ツ星を取得しました。

─家事検定? どんな内容なのでしょうか?

料理や掃除、洗濯、マナーなどについての問題です。番組がきっかけで挑戦することになって、それから2か月弱、時間があれば問題集を開いて頭に叩き込みました。
『袱紗の色は慶事と弔事でどう違うか」という問題もありましたが、袱紗自体使ったこともなく...問題を読んで「???」となることもしばしば。でもすべての問題には快適な生活にするためのヒントが詰まっているので、勉強そのものは苦ではありませんでした。特に料理に関しては番組の料理コーナーにも生きてますし、家事は毎日のことなので役に立たないものはありませんよ。

─福井のご出身ということですが、長野県はどうですか?

好きですよ。正直なところ、実際に来るまでは、長野県についてはあまり意識を向けたことがありませんでした。寒いのは大変だけど、住むと楽しいです。遊びもいいし、食べ物がおいしい。野菜、果物。トウモロコシとか、びっくりするくらいおいしいですよ。県外から来ているからこそ、信州のおいしものが良くわかります。このおいしさを普通だと思ってちゃダメですよ!
信州の人は、世間では内向的といわれることがありますよね。でも、ずっと内向的なのではなくて、心を開いたらすごく大切にしてくださいますし、家族ぐるみで大事にしてくださる方、取材が終わっても大事にしてくださる方が多いです。知り合いがいない状態で引っ越してきた土地ですが、信州のお父さん・お母さんといえるような存在に出会えたことは大きな財産ですし、取材が終わっても会いたいと思う人が多いですね。

─今後についてはどんなことを考えていますか?

まずは『ゆうがたGet!』の司会を極めたいです。『ゆうがたGet!』が大好きなので。
今は一緒に担当している伊東に頼っている部分が大きいのですが、スタッフも含めてみんなから頼られる存在になりたいなと思います。

─ありがとうございました。

松井美幸

Profile

松井美幸[Miyuki Matsui]
アナウンサー

7月6日福井県福井市生まれ。
広島市立大学国際学部卒。
テレビ信州に勤務し、2008年4月より『情報ワイド ゆうがたGet!(月~金 午後4時30分から午後5時50分まで放送)』に出演(月~木担当)。
趣味は旅行・エアロビクスなど。
2007年には『松本砂防大使』として国土交通省松本砂防事務所から任命を受ける。また『家事検定3つ星』の資格を持つ。

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