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Interview

定期的に更新するインタビューのページです。Webクリエイターだけでなく、
さまざまなジャンルの方々のインタビューを掲載していく予定です。


27 岡本豊

2010.11.04 [ Programmer ]

岡本豊

博多と長野を行き来しながら、自らを"現代の「からくり」を提供するプログラマー"と名乗り活躍している岡本豊氏。NSEGの活動のほか、ボランティアやNPO法人にもかかわりの多い岡本氏にお話を伺いました。

インタビュアー/坂田大輔 写真/ハラヒロシ 編集/志村純子
協力/D&DEPARTMENT PROJECT NAGANO by COTO

─面白い経歴をお持ちだとお聞きしています。ぜひ教えてください。

シンガポールで生まれて、東京、香港と、各2年ずつ過ごしました。父がゼネコンで働いていたため、海外での仕事も多かったので。
私が6歳のとき、父が脱サラして、須坂で建築事務所を始めました。

─ご両親は須坂のご出身ですか?

父は広島、母は群馬です。須坂には古くからの友人がいたようで、その関係で第一号の仕事が長野だったんです。

─幼いころの海外経験は、今に役だっていますか?

けっこう野生児で(笑)、勘が良かったんです。英語の幼稚園だったので先生はもちろん英語で話しますが、先生がこう言っているのではないかと察知して、日本人の友だちに「どうやら次はお菓子の時間らしいよ」とか、通訳まがいのことをしていたようなんです。環境が頻繁に変わるので、ちょっとした変化を察知する能力があったのだと思います。
知らない人とも仲良くなれる人懐っこいところもあったので、今の仕事に役だっていると思います。

─就職まではどのような経緯ですか?

高専の電子制御工学科に入学して機械・電気・情報を学び、卒業してシステム構築会社に就職しました。情報は専攻ではありませんでしたが。
普通の高校は3年しかないのですぐに就職や進学の準備が始まりますが、高専は5年間と長いので趣味を深めることができます。私は専攻科に進んだのでさらに2年の時間がありました。普通の高校に通うよりも、自由な時間がたくさんありましたね。

─岡本さんは"自由な時間"を何に費やしたんですか?

私の場合はボランティアでした。2年生のときに『いじめから友だちを守る会』というボランティアを立ち上げて、中高生を中心に、いじめをなくすための活動をしようというものです。
当時、マスコミでもいじめ問題は騒がれていたので、メディアに取り上げていただいて、全国に会員が産まれました。名簿や写真の共有などを取りまとめるためにインターネットを使わざるを得なくて、データベースを作りました。データベースを作るための入口の部分は授業で学んでいたので、さらに必要な部分を勉強して実行していました。
これがきっかけでプログラマーの道を志すことになりました。ボランティアのような団体でもシステムは必要だと思ったのです。でも、お金にならないからあまりない。じゃぁ私がなればいいんじゃないか、と。

─『いじめから友だちを守る会』を始めるきっかけは?

小学校の時の親友が、中学1年生の時に自殺したんです。私が外国から田舎の小学校に転入してきたわけですが、クラスメイトにとっては初めての転入生で、すごい壁ができてしまった。そのときに受け入れてくれたのがその親友で、すごく優しい奴で、6年間仲良かったんです。
中学に入ってクラスや部活が別になって少し距離ができていたんですが、三学期の始業式に学校に行ったら彼が来ておらず、校長先生から話を聞きました。
あとからいじめだということがわかってきました。最初は「何で親友だと思ってたのに何も言わないんだ!」と、私は彼のことを責めたんですが、いろいろ考えてみると、彼は私にメッセージを送っていたことを思い出してきたんです。「最近眠れない」と言っていたり、最後に話した二学期の終業式の時は「自殺はどんな方法がいいと思う?」と。冗談だと思って一緒に考えて帰ったんです。
私みたいに気づかないで、友だちを失ってから後悔する人や、親友のように誰にも相談できないままでいる人をなくしたい。そういう思いから始めました。
大人がいくらがんばっても子どもは隠すから、子どもの中に意識がないとなくなりようがない。同世代がやっている、旗が揚がっていることだけでも意味があると思いました。

─そういう思いがプログラムへの義務感を強めたんでしょうか?

反面、パソコンとかプログラムとか、そういうのが好きだった、というのもあります。6歳の時には、すでに父親が買ったパソコンを触らせてもらっていましたから。

─ボランティア以外にはどんなことをしていましたか?

部活は吹奏楽部でした。趣味の大道芸は高専3年生の時に、友人から教わりました。今年は長野で2回やりました。高専の文化祭には、親に連れられて子ども達が来ていますが、つまらなそうなんです。彼らに「今日来てよかった」と思ってもらえる何かをできたらいいなと思って始めたのがきっかけです。
もうひとつ、これもいじめ関係ですが、高専4年のときに人権教師を始めました。最初は弟の小学校のクラスに「いじめはダメだよ」という話をしに行きました。
いじめが起きてからでは遅い。小さいうちにいじめはダメだと植え付けなくてはいけないと思って始めました。数年後に県の教育委員会で人権教師派遣事業が始まって、今では県内の小・中・高をまわっています。

─活動を通しての苦労はありますか?

人が3人以上集まるといじめの縮図というか、摩擦は起きてしまいます。活動でもそういうことはありました。『いじめから友だちを守る会』も私を含めて3人が最初に核になって始めましたが、3年目のときに、もう2人の発起人が「岡本には私たちの気持ちがわからない、やってられない」と飛び出していきました。
あれは...しんどかったですね。自分を全否定されたような気持ちになりました。病気じゃないのに1か月で6キロも体重が落ちました。

─すべての経験は、今の岡本さんに生かされているんでしょうね。
お仕事のほうに話を戻しますが、システム構築会社ではどのようなことをしていましたか?

22歳で入社し、3年間は地図のアプリケーションを作る仕事をしていました。ブラウザ上で操作できるイントラ内のウェブアプリです。会社では人を動かす難しさを学びましたね。2年目にプロジェクトのプログラムリーダーを任されて、3~4人をまとめるという経験をしました。適材適所を考えて四苦八苦したのは良い経験です。
システム構築会社には4年間務めましたが、実は、入社前から独立を考えていました。ですからid=Naganoの勉強会にも参加したことがあります。
私はボランティアやNPO向けのプログラムにかかわりたいのですが、これらは安価に作らなければいけないため、大きい組織だとどうしても難しい。大きい会社に入ってやり方を学び、独立するつもりでした。自分が大きな組織の中でやっていける性格じゃないということもわかっていたので。

─独立する...機はどのように熟したのでしょうか?

悩みました。本当に食べていけるのかどうか...一番悩むところですね。
ただ、3年のプロジェクトをやっていたので、このタイミングを逃したらまた3年はいなきゃいけないと思ったんです。それじゃ遅いなと。3年後の自分では難しいと思ったんです。

─フリーとしての仕事はどうやって得てきたのでしょうか?

知人から紹介された美専の講師の仕事が最初でした。ちょうど独立するのでやります!と。あとはさまざまなイベントに参加して名刺を配りました。つい最近になって、長野での仕事も少しずつ来はじめています。ボランティアやNPOの仕事がしたいので、センターに足しげく通って覚えてもらったりもしました。

─『NSEG』の活動も盛んですよね。

まだ会社勤めしていた3月に立ち上げました。以前からの悲願だったので、引っ越してしまう前に立ち上げたいと思って。高専の2歳年上の大日向さんも転勤で長野から離れることが決まっていたので、その前にと。声をかけたら思った以上にたくさんの方が集まってくれて、現在まで続いています。
毎月勉強会を開催していますが、平均で20名が参加します。最初に告知したときは知人が多かったのですが、新しい参会者も増えていますね。まだ広がっていくと思います。

─近々、開催の予定があるそうですが。

今回はちょっと新しい動きなんです。NSEGは運営委員はおらず持ち回りで活動しているんですが、今回は久々に私が主催します。第9回のNSEG勉強会『あなたの面倒くさいをお持ちください』を11月13日(土)15時からbonnecuraで開催します。
あるプログラマーが、もんぜんぷら座の予約をとるとき、予約状況のページが見にくくて面倒くさいと。カッとなって、表をわかりやすく整理するプログラムを2時間かけて作ったんです。そんなに難しいことじゃないけれど、喜ぶ人はたくさんいますよね。
プログラマーの美徳のひとつが、面倒くさがり屋であることなんです。良いプログラマーというのは、1時間の面倒くさいを解決するためにに10時間かけることは面倒くさがらないんです。1回作ってしまえば、10人以上が利用するかもしれないし、自分でも10回以上利用するかもしれない。トータルで考えれば本当に楽になっているんですよね。
今回の勉強会では、自分たちの面倒くさいだけじゃなく、より多くの人に面倒くさいを持ってきていただいて、それいいね!となった人たちをつなげてプロジェクトチームをいくつか作って何かやろう、という会なんです。今までは自分たちを高め合うだけだったので、もっと外に開いて、地域貢献したり、ITの便利さを伝えたい。NSEGの参加者みんなの共通認識です。プレアンケートも行っているのでぜひ参加してください。

─現在は博多に拠点を移しているわけですが、なぜ長野でNSEGを立ち上げたのですか?

博多ではすでにこういった活動は盛んなんです。長野ではなかったので呼びかけました。いずれは博多でも何か立ち上げてみたいです。NSEGがきっかけになって、長野でもいろいろな勉強会が始まってほしいという気持ちがあります。

─Twitterを積極的に活用されていますよね。

博多と長野の移動もそうですが、外で仕事していることも多いので、Twitterでどこにいるのかを伝えています。クリエイティブな仕事は、同じ場所で、ブロイラーのような場所に押し込められてできるものでもないと思っています。
Twitterはムラもありますが、特にイベントでは活用しますね。「TLをドクロ(岡本さんのTwitterアイコン)にジャックされた」とクレームがくるくらい"Tsudaる"こともあります(笑)。
博多に引っ越した夜、Twitterで毎日日替わり定食情報を流しているお店を前から知っていたので「今日長野から引っ越してきました。今から食べに行きます」とつぶやいてから向かいました。そうしたら、店長さんが食べている間に声をかけてくれたんです。「今夜商店主向けのUSTREAM講座があるから一緒にいかないか」と誘ってくださって、行きました。そこは福岡のITの人たちの中心になっているところだったんです。そこで知り合った方に、翌日あるIT系の飲み会に誘われて。縁もゆかりもない土地で、2日間で50枚くらい名刺を配ることができました。Twitterがきっかけになったのが面白いし嬉しいです。

─飲んでいる場所をつぶやいたり、すごくオープンに使っていらっしゃるな、と。

何回かつぶやいていたら、フラッと立ち寄ってくれる方がいたんです。それがすごく面白いなと思って。メンバーも固定しないし、無理に来るわけでもない。そういうところが性格に合ったんですよね。さみしがり屋だけど群れたくないという矛盾した感じに(笑)。
自分の中にネットが匿名だという意識がないんです。インターネットはバーチャルな世界ではなく、人と人とをつなぐ窓なんじゃないかなと。その上で知り合った人には会いたい派ですね。

─これからやりたいプログラムはありますか?

ひとつはボランティアセンターの相談管理システムです。長野市はオリンピックがあったので整っているのですが、全国にはないんです。長野市のシステムには1千万かかっているんですが、今ならクラウドを使うことで単価を抑えて構築することができる。たくさんの人に使っていただけると思っています。
ふたつめは学校現場です。学校の先生に楽になってほしい。ほかの学校の先生が作った資料をテンプレートとして共有できれば労力の削減になる。そこにつなげる仕組みを作りたいです。事務処理を減らして生徒と向きあう時間がもっと増えたら嬉しいです。

─社会的貢献の視点が強いですね。

もちろんお金は欲しいんですけど。ビジョンがあって進めるときは、お金もついてくると思っています。
最近、自分の中で職人思考がだんだん小さくなっていって、ITの恩恵に預かっていない人たちに伝えたい、橋渡しをするメッセンジャーでありたいという視点が強くなっています。自分で作るよりも開発者を探すことが多くなってきました。

─後ほどお勧めアプリを紹介していただきますが、こういったものの情報収集はどのようにしていますか?

本やサイトをみることが多いですね。アプリは時間のあるときに『AppBank』を眺めています。アプリは、有料でも無料でも構わず、まず飛び込んでみます。コミュニティーもいろいろ飛び込みますね。
例えば『AppBank』も、業界の人は当たり前に知っているもので、ここに掲載されるとものすごい集客数を生むので目標としている人が多いです。こっちのコミュニティーでは当たり前だけど、こっちでは当たり前じゃない。いろいろなところに顔を出していると、それを伝えられる。業界だけじゃなく、年代だけじゃなく飛び込むことで、伝える人になれるんです。

─今後についてはどのように考えていますか?

ひとりでできることは限られていますが、会社は嫌なんです。辞めた自分が会社を作っては意味がない。フリーランスのような仲間を増やして広げたいですね。

─ありがとうございました。



◆岡本さんのお勧めアプリ◆

AudioNote
録音しながらメモをするアプリです。全部メモしておかず、要点のみでOK。メモにはタイムラインが自動的に表示されるため、聞きたいところを容易に探すことができます。

Evernote
自分のツイートログやブログ記事を送っています。また、名刺をスキャンしてOCRにかけて登録しておくと検索できる。どんなものでも、全部ここに入れておけば、必要な時にここを見ればよいという環境ができます。

Goodreader
主にPDF管理に使っています。Good Reader をハブにして、他のアプリからファイルを開けるのが便利。すべての資料を入れてあるので、iPadを持っていればどこでもプレゼン可能です。

PDF Presenter for iPad
PDFでプレゼンするアプリですが、プロジェクタにはメインスライドだけ表示され、手元には前後のスライドが表示されます。話をしながら良いタイミングで切り替えられるのでプレゼンしやすいです。

Flipboard
自分のTwitterやFacebook情報が雑誌のようなイイカンジで見れるアプリです。月刊より週刊より日刊より早く「今を見れる」。これが今後の電子書籍の形じゃないかと言う人もいます。

Profile

岡本豊[Yutaka Okamoto]
プログラマー

1983年シンガポール産まれ。父の脱サラと同時に長野県須坂市に住む。中学のとき、いじめが原因で親友が亡くなり、以降いじめ問題に取り組む。
2006年にシステム開発会社へ就職。2年目から3年間のプロジェクトで、プログラマのリーダを任され、経験を積む。2010年に退職、独立。「からくりもの」という屋号で長野・東京・福岡を行き来しながら活動を続ける。得意なプログラムは、PHP, Ajax, VB.NET, iPad, iPhone アプリケーションなど。最近は自分で開発するよりも仲間を集めて依頼することが増えてきた。
今まで作成したアプリケーションは HABANA DRIVE など。

Link

NSEG 第9回勉強会

日時
2010年11月13日(土)15:00~18:00
場所
「Kanematsu」
参加費
500円

詳細はNSEG 第9回勉強会へ。